2021.12.13

手づくり絵本コンクール審査委員の講評について

 絵本は想像力が必要なコンテンツです。アニメのように絵が動くわけでなく、物語の進行から登場人物たちの声まで、たったひとりの読み手に委ねられています。足りないところ……場面と場面の隙間、会話や音は聞き手の想像力で補っています。絵本を読んでもらう時、こどもたちは想像力でできたお話の海を泳ぎまわっているのです。待っていれば与えてくれる受動的なコンテンツとはまた違う魅力を持つ絵本。今年の応募作品には、そんな絵本に正面から向き合った作品がありとても嬉しく思いました。

 最優秀賞の『このたべもの だれの』は、シンプルなしかけの中にめくる楽しさを感じる、仕上げが丁寧なバランスの良い作品でした。穴の位置と次の絵がぴったり合っていると、さらに魅力が増したと思います。

 優秀賞の『どんな おと?』は非常に面白い試みで、「どんな おと?」の問いかけに、こどもが音を想像する場面が思い浮かぶ、絵本の強みを活かした作品でした。ページをもっと贅沢に使ってこどもが想像する「間」を作れていたら、より素晴らしいものになっていたと思います。
また、『ぺんぎんさん』はストーリーのある絵本で、魅力的な導入の絵が印象に残ります。食育やしかけ絵本の応募が多い中、ストーリーにチャレンジされたことを評価しました。これからもたくさん良い映画やお話に触れてくださいね。

 佳作の『しりとり』はテンポが絶妙なページネーションに優れた作品で、『やさい』は想像するのが楽しいアイデアあふれる作品でした。

 惜しくも選にもれた力作も多く、幼児教育や絵本に向き合う若者とご指導される先生方が多いことを、頼もしく感じる選考となりました。

                                               絵本作家 はやし  ますみ