

鉛筆を持って、あなたの目の前にあるものを紙の上に描いてみてください。ただし、手元を見ないで、まっすぐに対象だけを見つめて鉛筆を動かします。おそらく形をなさない線になってしまうことでしょう。
授業では、毎回はじめに、このような方法でクロッキーを行います。
何かを見て絵を描く際、私たちはよく見て描いているつもりでも、実際は左脳に記憶された形を一生懸命に絵にしようとしているだけで、ほんとうは対象をほとんど見ていません。
手元を見ずに描くと、最初は何の絵なのかすら判断できないような仕上がりになります。けれども、何度か繰り返し描くうちに、いきいきとした豊かな筆致で描けるようになります。
先入観を捨て、精神を集中して対象と一体となろうとすることで、あなたが描く素描は、強弱、抑揚、感情が現れた血の通った線となります。それこそが、直感的な右脳の感性を働かせてとらえた真実の形です。
「絵は苦手」だと思っている人も、この方法でクロッキーを続けると、先入観にとらわれずのびのびと自由に描く楽しさを実感できるようになります。
なぜ、このように直感力を磨くことが必要なのかというと、対象を直感的に観ることで、目と手と心が同時に作用する「目と手と心の一致」を体得できるからです。この直感的描写力が幼児造形との接点となります。
乳幼児の遊びは本能的な活動欲求を満たすだけでなく、五感の発達を助け、豊かな感性を育むために不可欠なもの。その遊びの大半を占めるのが造形的活動であり、保育者は造形表現活動が十分行えるように援助する役割を担っています。その際、接点となる直感的描写力を持っていることは、優れた保育者の資質となります。
子どもたちが造形表現活動に夢中になるのは、自分の思いが自分の手によって達成される喜びが味わえるから。この喜び(=創造する喜び)は生きる喜びにもつながります。
授業では、素描(クロッキー)体験を重ねながら、さまざまな材料用具の扱いに慣れるとともに、色彩基礎を学び、平面造形、立体造形における創作体験によって、感覚や感性を磨き、子どもたちの造形表現活動を保障・援助できる保育者を目指します。